知財経営シリーズ第2回

 
木島T&Bコンサルティングオフィス代表 木島研二

「知財の創出と活用」と中小企業の対応  20196月)

1.事業に有力な権利化できる知財

  知財は単に保有や出願だけでは無駄なコストになるので、権利化して事業に活用することが重要である。産業財、消費財で特に事業化に関係の深い知財とその概要を以下に示す。  

これらの内容は、知財の法制度の改訂により変わるため、最新の状況を注視しておく必要がある。技術面では特許が有力であるが、商品としては商標や意匠も重要である。実用新案は権利行使に課題もあるため、出願や活用には検討が必要であるが消費財では営業的な効果は考えられる。中小企業向けの施策や相談窓口等も拡充されている。

図表1 関連知財の特徴(公開知財情報よりポイントを記載した)

種 類

対象範囲例

登録と有効期間

事業への活用

特 許

技術的に高度な物、方法、

材料等、ICT活用の仕組み

査定登録

出願後20

技術や製品の独占と守り(参入障壁)

ビジネスモデル特許(ICT活用)

意 匠*

物の工業デザイン、

画面デザイン等

査定登録

設定後20

形状や概観等の認知、訴求(部分も可)

他社の侵害はわかりやすい

商 標

企業、商品、サービスの名称やロゴ、音や動き等

査定登録

10年ごとに更新可能

商品やサービスの認知、訴求(分野ごと)(3年不使用で取消)

著作権

ソフトウェア、コンテンツ、特定の技術資料等

創作で自然発生

死後50年で見直し

ソフトウェア、コンテンツ等の制作

非独占権、著作者の証明要、2次著作可

実用新案

実用品、産業品の装置

(物品形状)

出願登録

出願後10

権利化しやすいが、権利の活用が難しい

(権利行使に技術評価制度もあり)

2ICTの進展による影響

ICTの技術革新と適用拡大により、知財を取り巻く状況も大きく変わっている。その中でもソフトウェア、通信や制御技術、デバイスやICT機器のようなソフトからハード、ICT活用サービスやビジネスモデル特許のようなシステムが知財の対象となる。

最近はCAE3Dプリンタの性能向上に伴い、新たな機能やデザインの製品も拡大し、ICT進展によるデジタルデザイン等により意匠制度の見直しも進められている。さらにロボット活用、AIIoT活用の分野も拡大しており、ビッグデータの活用、各種情報の取り扱い等、新たな知財制度や対策も求められている。

たとえば、自動車分野では「自動運転」、「つながる車」、「EV化」、「シェアリング」等が進み、知財の内容や出願者が急激に変化している。ハードとソフトが融合し、製造業とサービス業の境界が曖昧になり、競合関係やビジネスモデルも複雑になっている。

顧客の大手企業や競合企業が取り組む中で中小企業も対応が必要となっている。革新的な性能の向上やコスト低減により、生産性向上や人手不足対策にも重要となってくる。

 

 

 

 

知財経営・補講

 
 


〜 前302号で掲載の「知財の創出と活用」と中小企業の対応」の補講です。

『中小・ベンチャー企業 知的財産戦略マニュアル』の紹介

中小企業基盤整備機構では、中小企業における知的財産の戦略的な活用を重要なテーマと位置づけ、『中小・ベンチャー企業 知的財産戦略マニュアル』を作成しています。

https://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/pdf/00all.pdf

【補講】 知的資産経営のための基礎知識

知的資産とは「従来のバランスシート上に記載されている資産以外の無形の資産であり、企業における競争力の源泉である、人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク等、財務諸表には表われてこない目に見えにくい経営資源の総称」を指します。

したがって、我が国企業にとっての強みの源泉である言われ、例えば以下のようなものも知的資産に含まれます。

■製造段階での「すりあわせ」等、製品の細部へのこだわり/技術・ノウハウ

■顧客との意思疎通による問題解決型の商品/サービスの開発スピードの速さとそれを可能にする組織/システム(取引先の側からの次世代商品のリクエストを含む)

■レベルの高い要求のフィードバックを可能にするレベルの高い消費者の存在と消費者と企業の結びつき(質の高いネットワーク)

■品質や中長期的な安定的存在感、中期的な取引関係等に基づく信頼に裏打ちされた商品/サービス/企業のブランド力

■レベルの高い従業員のモチベーションの維持/能力の発揮及びそれを可能にしてきた雇用・組織関連のシステム

■技能者の裾野の広さに支えられた知的創造の能力